楽器は音を奏でるために使われますが、モチーフとしても美術工芸の作品に登場します。また、モチーフとして登場する楽器は、全体ではなく、ごく一部だけが描かれることも多くあります。音を奏でるための楽器を越えて、デザインとしてどのように表現され、親しまれてきたのか型紙を中心にご紹介したいと思います。
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chapter1
縞に琴柱
まずは、琴柱(ことじ)です。琴柱とは、琴の胴の上に立てて弦を支える部分のことです。琴柱はその位置をかえることにより音の高低を調節し、音を共鳴胴に伝えるための道具です。弦を支えるため、タワーのような形をしていて、下側に向かって少し広がっています。この形が好まれたようで、琴の中でごく一部分の小さな道具である琴柱は、紋としても使われています。
chapter2
琴柱に桜
主に布地を染めるために使われた型紙にも琴柱を使ったデザインが見受けられますが、本来の形からアレンジもされています。たとえばこちらの型紙では、弦を支えるどっしりとした形ではなく、線で象られた琴柱となっています。琴柱本来の役割や形からは離れ、要素のみが抜き出されて表現されています。
こちらの型紙は、「突彫」と呼ばれる鋭く、薄く整えられた刃先を使って直線や曲線を自由に彫刻する技法によるものです。背景は直線の縞模様により表現されていますので、琴柱を曲線的に表現することでメリハリがつくよう工夫されています。また、桜の花も型紙の彫刻部分が多いものと少ないものとを配置することで、印象がかなり変わります。それぞれ対象的な表現方法を使うことにより、型紙のデザインとして調和がとられているのでしょう。
ちなみに、この型紙は地紙の大部分を彫刻していますので、布地を染める際に型紙自体の強度がやや弱くなっています。そのため、型紙が壊れてしまわないように「糸入れ」という絹糸による補強が入っています。背景となる縞に交差する細い線が糸入れに使われた糸です。
こちらの型紙は、「突彫」と呼ばれる鋭く、薄く整えられた刃先を使って直線や曲線を自由に彫刻する技法によるものです。背景は直線の縞模様により表現されていますので、琴柱を曲線的に表現することでメリハリがつくよう工夫されています。また、桜の花も型紙の彫刻部分が多いものと少ないものとを配置することで、印象がかなり変わります。それぞれ対象的な表現方法を使うことにより、型紙のデザインとして調和がとられているのでしょう。
ちなみに、この型紙は地紙の大部分を彫刻していますので、布地を染める際に型紙自体の強度がやや弱くなっています。そのため、型紙が壊れてしまわないように「糸入れ」という絹糸による補強が入っています。背景となる縞に交差する細い線が糸入れに使われた糸です。
chapter3
鼓
次にご紹介する楽器は鼓です。鼓は、胴の中央部がくびれていて、砂時計のような形をした両面太鼓の総称です。鼓は、革、胴、紐の三部分からなりたち、デザインとしても用いられます。こちらの型紙は、鼓が大きく配されていて、革には波模様が彫刻されています。また、紐の縄目が整い、房の部分も質感が表現されています。
一方、鼓もやはり各部分がデザインとして特徴的であるため、型紙の中では実際のものとは異なる形で使われています。
一方、鼓もやはり各部分がデザインとして特徴的であるため、型紙の中では実際のものとは異なる形で使われています。
chapter4
鼓の革
この型紙は、鼓の革の部分のみをデザインとして使用しています。たくさんの革が型紙を埋め尽くしています。革の重なり方も均一ではなく、それぞれ少しずつ違うのでそれが返って自然にも見えます。この型紙は、錐彫と呼ばれる小さな孔を彫刻できる技法によるものです。彫刻刀は半円形、あるいは円形に整えられているのでそれを半回転か押し当てることにより小さな円が彫刻されるのです。小さな円によって、曲線や直線が表現されるのです。
chapter5
鼓胴に革
さて、最後の型紙は鼓胴と革が配されたものです。鼓胴も形として特徴的であるためか、デザインとしてしばしば使用されますし、実際に使用される鼓胴には蒔絵などでさまざまに装飾されました。かたちや見た目の装飾性もあり、デザインとしてもよく利用されたのかもしれません。こちらの型紙に彫刻された鼓胴にも本物と同じように桜や萩、笹などが装飾されています。
楽器は本来音を奏でる道具として使われますが、デザインとして使用されると本来の形からは離れ、さまざまにアレンジされながら私たちの目を楽しませてくれます。
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(c) KYOLITE Co.,ltd. Mizuho Kamo
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